現在、私たちは高齢者社会へと歩みを進めており、人々の平均寿命は増加しています。これは医療の知識と技術の進化により、病気の診断と治療が以前よりも向上した結果です。しかし、それにもかかわらず、私たちの寿命が延びたとしても、身体の老化を止めることはできません。そして、避けられない老化関連の疾患の一つに、認知症があります。認知機能の衰えを遅らせる方法を探る多くの研究があり、運動や食事、脳のトレーニングなどが含まれます。2020年初頭、アメリカで行われた研究では、脳の健康に影響を与える薬やサプリメントに関する一般の理解と信念についてのデータが収集されました。その結果、多くの人がこれらの薬やサプリメントの効果を知らないことが判明しました。特に驚くべきことに、半数以上の人が、それらが脳に良い影響を与えるかどうかを知らないことがわかりました。さらに悪いことに、63%から77%が悪影響についても知らないという結果でした。にもかかわらず、回答者の68%は大学院以上の学歴を持っていました。ですから、私たちはよく使う薬やサプリメントの脳への影響について、もっと注意を払うべきです。
脳に良いサプリメント
多くの人が、ビタミンE、ゴジベリー、魚油、ビタミンDなどのサプリメントが脳に良いと考えていますが、脳の衰えや記憶力の低下を防ぐ効果は明確ではありません。魚油、ゴジベリー、ビタミンB、ビタミンDに関しては、それほど多くのデータがないため、効果は不確かです。同様に、
ビタミンB12と葉酸の摂取が記憶力の向上に役立つ可能性があるとされていますが、これも臨床的に重要な効果ではありません。脳の健康をサポートするとされる薬には、エストロゲン、糖尿病治療薬、血圧降下薬、コレステロール低下薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)などがありますが、それぞれが認知症予防に役立つという研究は少ないです。また、不必要に服用すると、脳卒中、心疾患、乳がん、肺血栓塞栓症などの副作用のリスクがあります。よって、予防や治療を目的とする場合は、薬の指示を守り、医師の助言を求めることが重要です。
その他、サプリメントの使用による認知症予防にはまだ明確な証拠がなく、サプリメントの種類、ブランド、対象者の違い、遺伝的な違いなどの研究の要因により異なります。
脳への影響を与える薬
抗コリン薬(Anticholinergic Drugs)は明確に脳に悪影響を与えますが、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬(Benzodiazepine)については過去の研究では、使用することで認知機能の低下リスクが高まることが指摘されていましたが、最近の研究ではそのリスクが明確ではないことがわかっています。しかし、全般的な研究結果からは、脳への悪影響が示唆されています。
結論として、サプリメントや薬には認知機能をサポートする明確な証拠がなく、一部の薬は脳に悪影響を及ぼす可能性があります。
認知機能の衰えを遅らせる基本原則
Lancet誌2020年に掲載された研究は、認知機能の衰えを遅らせるための2つの基本原則を提唱しています。それは、
1. 頭部の外傷を避け、空気汚染への曝露を減らすこと
頭部の損傷や脳の炎症を減らすことは、慢性疾患を管理すること、喫煙を避けることなどに焦点を当てています。これらの要因を減らすことは、脳卒中やその他の脳への損傷のリスクを減らすことに繋がります。
2. 脳の活動能力を高める
脳の活動能力を高めるためには、他人との社交活動、定期的な有酸素運動、脳トレーニングなどがあります。これらはいくつかの研究で認知機能の衰えを遅らせることに役立つとされています。
地中海式ダイエットと脳
地中海式ダイエットが全身と脳の炎症を減らす手助けをすることが示されています。このダイエット方法は、認知機能の衰えのリスクを減らす可能性があることが、最新の研究で示されています。
アルコールと脳
アルコールと脳の健康に関する研究は、飲酒量が直接脳の機能に悪影響を与えることを示しています。週に8ドリンク以上の飲酒は脳機能の低下を引き起こしがちですが、週に4ドリンク未満の消費では、脳機能を保護する効果は確認されていません。
食事、薬、脳の能力向上に関する様々な方法が脳の衰えを大幅に遅らせることはできませんが、運動や脳トレーニング、慢性疾患管理などを組み合わせることで、効果が期待できます。
したがって、脳の健康を保つための基本原則は、脳にダメージを与えないようにし、脳の能力を常に高めることです。これには、脳機能を低下させる薬の使用を避け、慢性疾患を適切に管理し、肥満を避け、たばこを吸わないなどの対策が含まれます。